人間ドック・健診Q&A

基礎知識や施設選び・受診のコツ、検査結果の活かし方まで人間ドック・検診にまつわる、気になること、わからないことを集めました。

Q

タバコによるがんは肺がんだけ?

タバコが明らかに体に悪いというのはわかっていますが、肺がん以外に影響のあるがんを教えてください

Aタバコの煙の中に含まれる発がん性物質は、肺から血管の中に吸収されて全身に行き渡ります。ですから、口の中や喉や肺のような煙の通り道の臓器のがんのみならず、直接煙が接触しない、食道、胃、膵臓、膀胱、肝臓、子宮頸部などのがんの危険性を増加させることがわかっています。そこまでわかっていても止められないのが、タバコ依存症の怖いところです。
Q

がんリスクが重複していて不安です

がんの発症リスクを見ていると、自分はいくつか重複しています。それだけ、リスクが高いということですか?

A発症リスクが重複する場合、足し算なのか掛け算なのかは難しい問題です。
例えば、ある要因を持っていると一般の人の3倍になり、別の要因を持っていると5倍になるとして、その両方を持っている場合、単純にリスクを足し算をするか、3×5で15倍なのか、あるいは足し算と掛け算の間なのか。その部分ははっきりしていません。どちらにしても、がん発症リスクが高まることは確実です。生活習慣など改善できるものは改善するとともに、定期的にがん検診を受けたほうがいいでしょう。
Q

乳がんになりやすい人とそうでない人は何が違うの?

胸が大きいほうが乳がんになりやすいと聞いたことがありますが、乳がんになりやすい人とそうでない人は何が違うのでしょう?

Aエストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンのレベルが高いと、乳腺の細胞の増殖を促進する作用があります。その細胞の増殖が発がんと関係しているのです。エストロゲンの生涯ばく露量が高い人が、乳がんの発症確率の高い人です。出産してない女性、初経年齢が12歳未満、肥満(BMI25以上)の女性などは、エストロゲンのレベルが生涯を通じて高い人なので、注意が必要です。
また、乳がんにはアルコールが関係しています。顔が赤くなる、ならないに関わらず、アルコール摂取量の多い人は要注意です。日本人女性のアルコール摂取量はあまり高くないのですが、とはいえお酒をよく飲む自覚がある人は、乳がん検診は受けたほうがいいでしょう。
なお、乳がん検診で現在のところ効果があるとされているのは、マンモグラフィによる検診です。受診間隔は2年に1回とされています。
Q

男性がヒトパピローマウイルスに感染すると前立腺がんになる?

子宮頸がんの原因は、性交渉の相手からのヒトパピローマウイルスへの感染だそうですが、男性が感染すると前立腺がんになったりするのでしょうか?

Aヒトパピローマウイルスは男性が感染しても、ほとんど病気にはなりません。前立腺がんとの関係も認められていませんね。
ヒトパピローマウイルスのワクチンというのがアメリカでは実用化されていて、日本でも有効性のトライアルが始まっています。アメリカでは思春期を迎える小学校高学年の女子にワクチンを接種しています。つまりセックスを始める前に免疫を持たせるということです。女性への感染を防ぐために、男性にワクチンを接種したらどうかという議論もありますが、今の段階では、日本で実施されることはなさそうです。
また、ヒトパピローマウイルスは菌ではないので、胃がんの原因であるヘリコバクターピロリ菌のように駆除することはできません。ただし感染しても子宮頸がんを発症する人はごく一部です。他方、現在の子宮頸がん検診はがん検診の中で最も早期発見による死亡予防効果の大きいがん検診です。2年に1度は子宮頸がん検診を受けて、がんの早期発見に努めましょう。
Q

子宮頸がんになりやすい人は?

子宮頸がんは何が原因でかかるのですか? また、どんな人がかかりやすいのでしょうか?

A子宮頸がんの一番の原因はヒトパピローマウイルスというウイルスへの感染です。ヒトパピローマウイルスには性行為で感染します。自分のセックスパートナーが多い、自分の相手のセックスパートナーの数が多い、などの場合は、感染する機会が多く、子宮頸がんにかかるリスクは高まります。
また、出産時に子宮頸部が切れて、そこに感染を起こす可能性が高まると考えられ、出産数が多い人も子宮頸がんのリスクが高いといえます。そのリスクは出産数に比例して高まります。
さらに、これはリスクの高さに関係することですが、すべてのがんは年齢に比例して発症確率が上がります。ところが、子宮頸がんは60歳以上になるとがん検診の受診率が下がります。検診を受けることに対する心理的な抵抗が大きいようですが、60歳を過ぎて子宮頸がんになると生存率がすごく低くなるんです。これはがんの発見が遅れるのが主な原因だと思います。他のがんも同様に、いくつになっても、がんで命を落とさないために、検診は必要なのです。
Q

タバコに比べてお酒は、がんのリスクは低い?

タバコは吸いませんが、お酒が大好きです。でも酒は百薬の長という言葉もあるし、休肝日も定めているので、タバコに比べれば、がんのリスクは低いと安心していますが…

Aお酒の飲みすぎで肝臓がんを連想する人も多いと思いますが、実際はアルコールだけでがんにまではなかなか進行しません。アルコール依存症や、浴びるくらいお酒を飲んでいると肝硬変までは進行しても、その人は肝がんになる前に死亡してしまうことがほとんどです。
むしろ飲酒で気になるのは口内や喉にできるがん、食道がん、それに大腸がんです。顔が赤くなるのにお酒をたくさん飲む人は、これらのがんのハイリスク群に挙げられます。アルコール内のエタノールという成分が、酔っ払って気持ちよくする働きを持っていますが、体内ではそれがまずアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドが発がん物質で、細胞を傷害する物質です。それが次に肝臓で酢酸に分解されます。日本人の40%は、アセトアルデヒドから酢酸に分解される時の酵素の活性が低い人です。55%は酵素の活性が高い人。残りの5%はまったく分解する酵素なしで、奈良漬を食べても酔うような人。そういう人はもともと飲めないから、飲酒によるがんのリスクには関係ありません。
問題は40%の酵素の活性が低い人。そのうち、付き合いなどで毎日3合ぐらい飲む人は、さらに発がんリスクが高いですね。顔が赤くなるのに1日3合を1週間に5日以上のお酒を飲む。そういう人は大腸がん検診を受けたほうがいいです。
もちろん、お酒を多く飲んでも顔が赤くならないタイプの人でも、毎日3合ぐらい飲む人では口内や喉にできるがんや食道がんになりやすくなります。